休暇のすすめ
皆さんはこれまで、会社で定められたもの以外に、自主的にまとまった休暇を取った事あるでしょうか?
有給休暇は年間20日間与えられます。
これらを駆使すれば、理屈では1ヵ月まとまった休みを取ることができます。
前年度の繰越がある方であれば、2カ月の休暇を取ることさえできます。
でも、いくら理屈で取れたとしても、実際に取る人はまずいないでしょう。
それはなぜでしょうか?
ちょっと考えてみましょう。
・周囲に迷惑をかける
・休んだ分だけ仕事が溜まり、休み明けが大変になる
・自分が休むことでトラブルが起きないか心配
・勝手に休みを取ると何を言われるか心配
・職場に休んではいけない雰囲気がある
・周りはみんな忙しいので、1人だけ休むことに気後れがある
・上司が取らせてくれない
挙げたらキリがありませんね。
最後の1つは論外ですが、結構当てはまるものが多いのではないでしょうか。
私の同僚が風邪で休み、復帰した後「休んですみません」と言っていましたが、このように体調不良でさえ、休むことに罪悪感がある方は少なくないと思います。
しかしながら、有給休暇と言うのは、国から与えられた労働者の権利です。
日数は違いますが、パートタイムにもその権利が与えられています。
そして、業務に支障が出ると判断された場合は、時期をずらすことはできますか、原則として会社は申請された有給休暇を断ることはできません。
なので、上司が有給休暇を取らせてくれない場合は法律違反なので訴えましょう。
ちなみに厚生労働省のウェブサイトには、年次有給休暇の目的として「心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するため」とありますので、もしものときのためといって残して、自然消滅させるようなものではありません。
さて、法律的には全く問題ないことがご理解いただけたと思いますが、法律などではなく、それ以外の問題によって休めない方が大半だと思います。
おそらく次の5つに分類されるのではないでしょうか。
- 業務の属人化: 担当業務をできる人間が自分しかいない
- 問題に対する感度の高さ: ちょっとした問題でも大きく感じると、休むことで何が起きるか分からず不安になる
- 人員の不足: 1人が抜けることでチーム全体の出力が落ちる
- 悪しき一体感: みんなが大変な思いをしている時に1人だけいい思いをするのはズルいという感覚
- 過去からの慣習: 休むことは悪いこと。休まないのが普通なので休みづらい
どれも根深い問題だと思いますが、これらの問題を一気に解決する方法があります。
それは「まとまった休みを取ることをルール化する」ことです。
チームで休みが被らないように連携を取り、1人ずつ全員休むことをルール化すれば、上記の問題は基本解決してしまいます。
私の職場の事例をもとにご説明させていただきます。
ことの発端は、先程の「休んですみません」という発言でした。
社交辞令かもしれませんが、体調不良で休んだにもかかわらず、それを謝る。
しかも我々の職場は、上記の問題点を体現したような職場でした。
・業務の属人化: 「製品担当」と呼ばれる担当者が、各製品群に1人ずつついており、隣の担当者が何をやっているか分からない。
・問題に対する感度の高さ: 出荷部門であるため、問題が起こったときに納期に間に合わせるために走り回らなければならない。休んだら休んだ分だけ出荷未達になるリスクが高まる。
・人員の不足: 残業時間の長さは会社でも有数。それでも仕事が回っていない。
・悪しき一体感、過去からの慣習: これは日本企業であれば当てはまるところは多いと思います。特に我々の職場は、ひと昔前までブラック企業と呼ばれるような劣悪な労働環境で、それを当たり前と思っている世代も少なくありません。
これらを問題視した1人の従業員の発案で始まったのが、まとまった休みのルール化「1週間休もう運動」でした。
休むにあたっては、以下のルールが定められました。
・チーム全員が、一年に一度、5日間の連続した休暇を取る(土日と合わせれば9日間)
・1人が休む際には2名がサポートに入り、担当業務を全て肩代わりする
・休みはなるべく月がかぶらないようにする
・引き継ぎ、事前連絡を徹底する
・休み明けには「ごめん」は絶対に言わない。かわりに「ありがとう」と言う
細かいルールはまだありますが、大雑把にはこんな感じです。
いつ休むかの打ち合わせをして、全員の休みとサポート員を確定させ、1年間で全員1週間ずつ休みを取りました。
全員取り終わったところで振り返りをしたところ、出てきた問題はゼロでした。
それどころか、メリットばかりで、今は拡大して2週間休みになっています。
・1週間のまとまった休みで心身ともにリフレッシュ
・隣の担当者がやっていることが分かり、休みの時でなくても、負荷の低い担当者が高い担当者をサポートすることができるようになった
・担当者がやりきれなかった仕事をサポート員が回すことで、逆に業務が流れるようになった
・休むことが普通になったため、休みを取りやすくなった
・担当者同士のコミニケーションが増えた
・製品の違いによるルールの違いが浮き彫りになり、ルールの統一化が進んだ
自分が休んだらどうなるんだろうという不安は、担当者の責任の高さともいえますが、この仕事は自分にしかできないという思い込みのようなものもあると思います。
特に、担当期間が長ければ長いほど、担当者は、自身の仕事を囲い込み、ブラックボックス化してしまう傾向にあります。
このような状態は、個人としても会社としてもマイナスでしかありません。
例えば誰かが不慮の事故で入院したら? 産休育休に入ったら? 突然退職したら?
その時はその時で、何とかするしかないでしょう。
逆に言えば、そんな状態でも何とかなるのであれば、誰かが1週間休むくらい些細なことです。
いつ休んでもいいような職場であれば、こんなことをする必要はありませんが、休みたいのに休めない、という職場なら、こんな感じのショック療法が必要になります。
さて、これまで長期休暇のメリットをご説明してきましたが、1番の問題は「どうやって始めるか」でしょう。
1番簡単なのは、上司や社長がやろうと言ってくれることですが、それが期待できないなら、誰かが言い出す必要があります。
それを言えるのは、この記事を見ているあなたです。
でも、それを言い出すのが難しいですね。
勇気がいります。上司が聞いてくれる相手かにもよります。勢いも大事です。
事実、さまざまな職場に紹介したところ、賞賛こそされましたが、自分たちもやると言った職場は皆無でした。
それでも、少なくとも私の周りの職場は働きすぎなので、もうちょっと休んでもいいのになと思っています。