メールを効率よく返す方法
最近だと社内チャットなど、メール以外のツールも増えてきましたが、まだまだメールが主流という会社も多いと思います。
特にメールの返し方というのは、新入社員で悩まない人はいないのではと思うほどの難題ですが、効率のよい返し方というのは、案外議題に挙がらない内容です。
仕事をしていく上で皆さん自身の型が出来上がり、最初の難しさを忘れるのでしょうか。
しかしながら、全業務のうち、オフィスワーカーがメールに割く時間は全体の3〜5割と言われており、その効率化ができれば業務効率の大幅な向上に寄与します。
メール全体の効率化という意味ではかなり範囲が広くなってしまうので、今回は返信の仕方に絞ります。
メール返信の効率化のためには、読むスピードを上げる、作文のスピードを上げる、メールの回数を減らす、の3点が考えられます。
このうち、読むスピードを上げることについては、メールに限った話ではないので別で説明します。
作文のスピードを上げることが今回の説明の主流になりますが、メールの回数を減らすことも大事な要素です。
いくら作文のスピードが上がったとしても、ラリーがいつまでも終わらないのであれば、それは効率がいいとは言えません。
それでは、詳しくご説明していきます。
・敬語を覚える
この世で最も無駄でありながら、無視できないもののひとつに敬語があります。
なぜ無駄かというと、メールの本来の目的である「意思疎通」に関係ないことだからです。
なぜ無視できないかというと、敬語に問題があると相手の気持ちを害する可能性があり、そうなったら意思疎通どころではなくなるからです。
ということで、無視はできませんが、一旦身についたらとやかく言われることはなくなるのでさっさと覚えてしまいましょう。
大切なのは「細かいことは気にしない」ことです。
例えば「お疲れ様 ご苦労様」で検索してみて下さい。
お疲れ様は失礼という記事と、ご苦労様は失礼という記事の両方が出てきて混乱しますね。
どちらが正しいのでしょうか?
私の結論は「どうでもいい」です。
敬語は細かくなればなるほど人によって正解が変わりますし、マナー講師を喜ばせるだけです。
また、「させていただく」のように、シチュエーションによっては誤用とされる表現もあります。
そういうものについても、私はあまり気にしない方が良いと思っています。
敬語の目的は、相手に対して自分の丁寧な気持ちを伝えることだと思っていますが、その気持ちさえ伝われば、多少の誤用はあまり誰も気にしていません。
どうしても気になるという方は止めませんが、他に学ぶべきことは星の数ほどあります。
また、敬語を学びすぎる一番の弊害は、他人の敬語の間違いが気になってしまうということです。
自分の間違いを指摘されなくなるために敬語を学ぶにもかかわらず、学びすぎたことによって相手を指摘してしまうようになるのであれば、それは本末転倒ではないでしょうか。
というわけで、今の日本では敬語を学ぶ事は避けては通れませんが、とりあえず意思疎通ができる位まで学べばそれ以上は必要ないというのが私のスタンスです。
・定型文リストを作る
このご時世「時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」などと書く方はまずいらっしゃらないとは思いますが、どんな仕事をしていてもいくつかの定型文というものはあるものです。
例えば「お世話になっております」とか「お問い合わせまことにありがとうございます」とか「よろしくお願いします」とかです。
定型文を毎回1から考えるのは本当に時間のムダですし、タイピングしている時間ももったいないです。
どこかに定型文リストを保存しておいて、必要に応じて引っ張り出せるようにするか、変換で定型文を出力できるように辞書登録しましょう。
また、周りの人のイケてる言い回しは積極的にパクりましょう。
イケてる枕詞などは、なかなか考えても出てくるものではありません。
よく「TTP(徹底的にパクる)」などと言われますが、ここでもパクることは大切です。
・タイピングを速くする
どれだけ思考速度が早くなったとしても、手の動きがそれに追いつかない限りは、メールの返信速度は早くなりません。
タイピングが遅い自覚のある方は、言い訳せずにさっさとタイピングを学びましょう。
タイピングというのは、オフィスでコンピュータを使って仕事をする限り、半永久的に使えるテクニックです。
その後数十年の会社生活で役に立つと思ったら、学ばない手はないでしょう。
ただ、職種によってはもうコンピュータを使う必要さえなくなるかもしれません。
じつは私も、このブログの記事はスマホの音声入力で作成しています。
音声入力を一度体験してしまうと、タイピングでは決して追いつけないことが分かると思います。
スキルはあくまでも手段であり、大事なのは何を生み出すかです。
目的に応じて必要なスキルを身に付けるようにしましょう。
・返信のパターンによるコツ
メールの返信には大きく分けて、
- 了解の返事
- 質問をする
- 質問に答える
- 報告をする・意見を言う
- 相談をする
の5パターンが考えられます。
それぞれに応じたコツを説明します。
①了解の返事
相手のメールを受け取ったこと、相手の言いたいことを理解したこと、相手の依頼を了解したことなどがそれにあたります。
ここで大事なのは、短文で素早く返信することです。
了解したことを相手に伝えるだけなので、何よりも大事なのは時間をかけないことです。
「合点承知の助」とかの大正時代の言い回しも、「君のためなら頑張れるよ」とかの気持ち悪いセリフも一切必要ないので、早く返すことだけを意識しましょう。
相手にやる気をアピールしたいのならば、とりあえず語尾に「!」でもつけておきましょう。
ただし、ご自身が新人であれば注意が必要です。
難しい依頼をした時に右も左も分からない新人から「承知しました」などと即レスがきたら、むしろ不安になるでしょう。
特に相手がこちらの能力を不安に思っている場合は、理解してるということを伝える意味でも2~3個質問して相手を安心させてあげましょう。
②質問をする
自分の知識や理解が不足している前提で質問しましょう。
「教えてください」というスタンスで聞かれて悪い気がする人は少ないでしょう。
建前だということが相手にばれていても構いません。
形式的にでもこういう書き方をするだけで、相手がくそ面倒な質問にいちいち答えなければならないという、心理的な負担を下げることができます。
心理的な負担を下げると言う意味では、語尾につける「?」マークはあまり多用しないほうがいいでしょう。
あまり「?」を連発されると、相手は尋問を受けているような気分になります。
相手がなるべく気持ちよく答えてあげられるように工夫しましょう。
また、心理的だけでなく、脳みそに対する負担も減らしてあげましょう。
質問が複数ある場合には、とりあえず箇条書きにしましょう。
箇条書きにするだけでいくつ質問あるかが分かり、文章のまとまりが分かりやすくなります。
また、「?」のプレッシャーも若干軽減されます。
相手が最後の質問に回答し忘れるリスクも減ります。
箇条書きに慣れたら、箇条書きの「階層構造」も意識してやるといいですが、それはまた別のお話です。
③質問に答える。
自分の説明が不足していた前提で回答しましょう。
いくら「都会のカラスの方がまだ頭いいぞ」などと思っていたとしても、少しでもそれを出してしまうと、相手は二度と質問ができなくなってしまいます。
そして、回答の内容は、相手がさらに質問をする余地がないくらいに懇切丁寧に説明しましょう。
こちらの回答を見て、相手がさらに質問をして・・・と繰り返す事は、お互いの時間を奪うことにつながります。
多少めんどくさいと思っても、一回のラリーで終わらせるつもりで答えましょう。
そして箇条書きで質問をしてこなかった場合は、最後の質問に答え忘れていないか注意しましょう。
④報告をする・意見を言う
結論から言いましょう。
「PREP法」という説明の仕方が有効です。
以下にざっくりと解説します。
P: Point(要点)
R: Reason(理由)
E: Example(具体例)
P: Point(要点)
たとえばこんな感じです。
自分の意見を言う時には、PREP法を意識しましょう。
最初に要点を言うことで、相手はこちらが何を言いたいかを把握しやすくなります。
この文章はダラダラと起承転結を書いている文章に比べるとストレスなく読めませんか?
お互いのためPREP法を意識して、コミュニケーションを円滑にしましょう!
あまりPREP法をやりすぎるとくどい文章になってしまいますが、少なくとも最初に結論を書くことを意識するだけで、自分の考えなどを要約するクセがつき、論理的思考力も同時に鍛えられます。
意識して書かないと、私も結構忘れがちですが、比べると読みやすさが大分違うのが分かると思います。
⑤相談をする
簡単な相談や、相手が十分なバックグラウンドを持っている場合を除いて、慣れないうちはメールでの相談はなるべく避けましょう。
多くのビジネスパーソンにとって、最も重要な仕事でありながら、最もプレッシャーがかかるのが「判断をする」ということです。
自分の判断が間違っており、それによって会社が損害を被ることを、最も恐れるのです。
飲み会の会場選びでは活発な議論が繰り広げられるのに、投資判断ではお通夜のように静まり返るのはそのせいです。
中には一切の判断をしないような人たちもいますが、案外そういう人たちが高い立場にいるものです。
それは、日本企業は減点主義なので、何もしなければ減点されずに相対的に評価が上がるためです。
話がそれましたが、判断というのはそれだけプレッシャーのかかることなので、判断する側はなるべく多くの判断材料が欲しいと思うものです。
そのため、大事な判断を迫られると、検討する価値のないゴミのようなアイデアを出してきて、「こういう細かいことまで検討しないとダメだろ!」と罵って余計な仕事を増やすのですが、悩ましいのは自分の検討不足との区別がつきづらいことです。
決済権を持つ相手であれば、仕方ないのでその場は素直に頭を下げて検討し直しましょう。
それはともかく、メールでは判断するための情報量が少なすぎたり、上位者の言うことに意見しづらく一方的な判断になりがちなので、メールで「追って相談させてください」と打って、後で相談に行くか、打ち合わせを開いた方がいいでしょう。
その前提のもと、相談する時にはなるべく自分の意見とその理由を添えましょう。
自分の意見があるかないかは、特に若手の評価指標になりがちです。
それは、ビジネスパーソンにとって最も重要な「判断」をする資質が備わっていると見られることと、相談された側は何もないところから考えるよりも、相手の判断を批評しながら決める方がラクだからです。
ということで、問題の大きさにもよりますが、なるべくメールでの相談は避けることと、相談する時には自分の考えとその理由を持っていくのがいいでしょう。
・メールで個人攻撃をしない
効率化ではありませんが、この「個人攻撃をしない」ということは、ある意味メールを使ううえで最も大事なことのひとつです。
メールというのは、一歩間違えると恐ろしいツールになります。
面と向かって話をする場合には、相手の表情などから様々な情報を読み取りますが、メールは基本的に文字のやり取りだけなので、人は無意識に、不足する情報を文章の裏に想像してしまいます。
そして、大抵の場合、それはネガティブな感情です。
例えば、「なんでそう思ったんですか?」と質問を受けたら「怒られた! やっぱり考えが足りなかったんだ!」と受け取るとか、「そう思います・・・。」と書いてあったら、最後の「・・・。」を見て「本当はそう思ってないんだ!」と思ったり、です。
皆さんも心当たりあるのではないでしょうか?
それを回避するために、自分が質問をする時には自分の理解が足りないことを言い、質問に答える時には自分の説明が不足していたと謝るのです。
それでも相手は何かと理由をつけてネガティブな感情を勝手に抱きます。
ChatGPTに聞くのがラクなのは、ChatGPTは間違ってもあなたの脳みそがミジンコレベルだなどと思わないからです。
そのように、メールは便利なアイテムではありますが、ちょっとしたことで負の感情を抱かせる厄介なツールでもあります。
そこで誰かをけなすような文章を書いてしまったら、どうなるでしょう。
しかも宛先に複数人が入っていたら、メールを受けた方は公開処刑をされた気分でしょう。
見ている方も不快な気分になります。
そのせいで信用を失墜してしまった上司を知っています。
そういうわけで、特に相手にネガティブなことを言う時、メールを打つ方がラクですが、危険なので出来る限り直接言うようにしましょう。
・最後に、自分の感情に気づく
今まで相手の反応を想定してメールの文面を説明してきましたが、これはそのままあなたがメールを受けた時に抱く感情です。
あなたの発言にポジティブな反応をする人に対しては、メールを書く時間が短く、逆にネガティブな反応をする相手には時間がかかっているはずです。
それは、相手の反応を想像して思考が堂々巡りしているためです。
その状態になったら、大抵の場合は考えても結論は出ません。
その状態に気づいたら、文面を誰かに相談しましょう。
あなたには相手の思考が読めておらず、その文面の良し悪しが判断できないので、判断できる相手に聞いてしまうのが最も手っ取り早いのです。
相談できる相手がいなければ、考えるだけムダなので目をつぶって送信してしまいましょう。
以上ご説明しました通り、メールは意思疎通の手段でありながら、それ以外に考えるべき要素が多いツールです。
そういうところは面倒ではありますが、それ以上の便利さがあるのでここまで広く使われています。
今回ご紹介したコツを押さえて、メールの便利な側面を有効活用できるようになりましょう。